木曜日, 11月 10, 2011

Appleが強い理由

Appleが次の四半期の出荷数量を10%以上削減する為に部品発注量を調整したようだ。タイなど一部地域からの部品調達の影響があるとも言われているが、今後欧米での景気後退懸念が強いのが最大の理由なのは間違いない。何故それが可能なのかと言えば、世界中に拠点を構える店舗(他者の販売店も含む)の生のデータをベースにSCMを回しているからに過ぎない。何処かのメーカーのように市場に出荷した量を自慢する事(そんな事で人気を煽っても意味はない)など馬鹿げた事だと考えているので、Appleが発表する数字は常に顧客の手に渡った数がベースになっているのはご存知だろう。Appleが販売店に要求する数字は、常に発注数ではなく週次で販売された数量なのだ。

当然、販売店に出荷する量はAppleに主導権がある(実績ベースの予測数)。販売店の見込み数量による発注など鼻から相手にはしていない。これは、日本のメーカーではあり得ない話なのだが、日本のメーカーが競争力を失った最大の理由だと未だにきづいていないのだから憐れなものだ。製造や販売部門が勝手な予測で販売数量を弾き出し、それを消化してくれる発注を出す販売店を優遇する。挙げ句の果てにはちっとも売れないと泣きつかれれば、販売奨励金でサポートする形で目標販売数を達成すると言う無様な結果に終わるのだから利益など出る筈はなく、でかいアドバルーンを上げておきながら突然の撤退となりユーザの信頼を失うのだ。

典型的なのが2010年が3D元年で2011年が3D断念になった事だが、潜在的なニーズの存在しない製品を各社が右に習えで出しまくったのがそもそもの原因。来年辺りにAppleが潜在的なニーズのある3D使った製品のを出して来たらその後追いをするのか、それとも羹に懲りて様子を見るのかが最大の楽しみである。

さて、長くなってしまったがティム・クックがCEOに選ばれた最大の理由が今のAppleの強さを支えているサプライ・チェーンを完成させたからだとお分かりいただけただろう。趣味に過ぎないApple TVを出し続けられるのも単に資金に余裕があるからではなく売り切る事が可能な数量しか作っていないからなのである。Appleに大量発注をした事があれば分かるのだが、あなたの大量発注は通常の製造ラインに回っている中からは割当されない。絶対に買い取ると言う確約(Appleと直接契約書は交わさないがどこの一次卸を通して何台仕入れるかの確認がAppleから直々に入る。それに答えられなければ商品はいつ迄立っても入らないと考えるべきです)の元に一つのラインを作る方法をとっている。他のメーカーでこんな事を頼んだら何ヶ月先になるかは分からない(そもそも余裕在庫があるのですぐ届くだろうが、もしも万が一人気商品だったらの話)が、Appleならば最短で半月もみれば十分なのだ(その期間でお金を手立てきるかの方が問題だったりする)。

結論:以上でお分かり頂いたように(理解頂いた事が前提)、Appleは一週間単位で販売予測に基づいた製品の製造を行っているため最悪一週間分の不良在庫しか存在しえない。iPhone 4Sの様に人気の商品は毎日各工場から出荷されている(船など当然使わない)。ここまでコントロール出来るのだから強いのは当たり前なのだ。

水曜日, 11月 02, 2011

スペックを重視する

 未だにモノを買う時にスペックありきの人が存在する(私だって同じ使い勝手なら動作が速い方が良いに決まっている)。カタログ上のCPUは速くなければいけないし、メモリは少しでも多くなければいけない、その上いつ自分が使うチャンスが来るかも考えもせずにどうでも良いハードウェアが載っていればニンマリとする(大体そんなものは買った時に一度試してみるだけでその後は廃棄される時まで使わず仕舞いだ)。本質追求型の人間からすれば自分が使う可能性のない機能など無用の長物なのだが、根が貧乏症なのか取りあえずいろんなものが載っている方が価値があると未だに勘違いしている。だから取りあえず目新しそうな何かをくっつけておけば良いのだから、何のビジョンもないメーカーにとっては有り難いお客様なのだ。
 
 アナログの時代は技術は役に立つものであったので理系の人達の蘊蓄はお役立ちだったし、確かに日本の技術者の技術は他の国には真似の出来ない特別なものであった。だから、世界中を日本の家電が席捲出来たのだが、デジタル時代になてしまい手作りの部分の比重が小さくなってしまった(Appleを見れば分かるようにデザインなどアナログの部分に拘る方法もある)。同じ部品を組み立てるだけなのだから技術的なバックボーンがなくても製造業に進出出来、明らかに国内のメーカーだけを相手にしていた時以上に商品寿命は短くなってしまった。その揚げ句がどうでも良いハードウェアの搭載。スペックオタク以外は食付かないネタで売ろうと言うのだから製造コストばかりが嵩んでしまい結局自分の頚を絞める結果になっただけなのである。
 
 何でAppleの製品がヒットしているかは自ずと明らかなのだが、カタログ上の飛び抜けたスペックもあっと驚くようなハードウェアも搭載していないがトータルバランスがどこよりも良くて、優れたユーザビリティを持っているのがAppleが選ばれる最大の理由。このIT時代に全くマニュアルを見なくても取りあえず使えてしまう製品など、他を見渡してもないのだから売れるのは当たり前の話。あんなの女子どもやリテラシーの低い連中が使うオモチャだと頭のヨロシイ人は考えているのだろうが、特定(偏った頭のと言う意味だ)の人しか使いこなせない製品と誰でも使える製品のどちらが大きなパイなのかは集合の教科書を引っ張り出すまでもなく明らかだと思うのだが、理系の人には理解出来ないらしい。
 
結論:モノから心に時代が移り変わったのに未だにスペックにこだわる人達はどんなに最先端を目指していても時代遅れの人達なのである。やりたい事が出来れば理屈なんて知らなくても良いと思うのだが、如何なものだろう。