土曜日, 8月 20, 2011

誰のためのデザイン

 初めて見るものであっても何が出来るか判断可能なのは良いア​フォーダンスを持っているから。iPadやiPhoneがホーム​ボタンひとつが目立つのは、​恐らくそれを押せば何かが起こるだろうとユーザに知らせる効果を​持っている。逆に多くのボタンが並べば、その目的がわからずマ​ニュアルを見る事になる。iPadやiPhoneのユーザインターフェースは認知心理学を応用​してデザインされている為に、複数のボタンが並ぶAndroid​と比べ数段使い易い(メーカーやバージョンによってその配置さえ変わってしまう)。ユーザに優しく設計されているかどうかはボタンの数を見るだけで分かるのだ。

iPadやiPhoneだって使いづらい部分がないわけではないが、他社と比べ優れたインターフェースとなっているのは偶然ではない。どこかのOSには機能が追加されればそれで良いと考えている節があるが、AppleはMacintosh開発以前(既に30年近い)からユーザビリティを優先してシステムを開発して来たには間違いない。「誰のためのデザイン」で有名なD.A.ノーマン博士をAppleフェローに迎え入れたのも、インターフェースガイドラインを厳格に定義したのも、ユーザビリティを向上させるためだったのだ。

結論:Appleは机上の設計ではなく机上で使うユーザの為に設計をしている。一度Appleの製品を使い始めた人が他の製品を手に取る事が減ってしまうのは、ユーザに対する優しさに大きな違いがある事を痛感したからなのだ。

AppleはMobile PCのトップベンダー

Apple信者以外の人はiPadをノートPCのカテゴリに加えるのは卑怯だとほざくかもしれないが、タブレット並の機能しかない(OSは大抵WindowsなのでOfficeは動くが)「ネットブック」(もう死語か)よりは実用的なiPadを抱えるAppleは既にMobile PCのトップベンダーになってしまった。ノートPCとタブレットを分けてノートPCだけで比較すればAppleは未だにトップベンダーではないかもしれないが、それではタブレット型の次世代PC(専用のOSを持たないタブレットPCではないぞ)に該当するもので、iPadを凌駕するようなものがあるのだろうか。HPはwebOSを諦めてしまったので実質はGalaxy Tabしかないが、Samsungが言うように本当に売れているのなら、大型液晶テレビにオマケで付けるような事はしないはずである。次のモデルを出すために在庫整理を始めたのかもしれないが、それだけ不良在庫を抱えている証拠でしかないのだ。

そして、すっかりメッキの剥がれてしまった「ネットブック」では、iPadと比較しても話にならないのでIntelが持ち出したコンセプトが「ウルトラブック」と呼ばれる薄くて軽くて高性能で安価なノートPC。コンセプトはあるのだが、現在その定義に該当するのは、Appleが独自に開発したMacBook Air位なもの(Airはウルトラブックではないが)。他社製(SONYとか言う名前だった気がする)で「ウルトラブック」に近いモデルはAppleのようにエントリーモデルではなくハイエンドモデル。Dockなどが付いているが、無しのモデルをApple以下の価格(8万円代前半。13は10万越えだよ言うかもしれないがそれでも格下CPUで5割も高く重い)での販売は到底不可能(Appleと違い投げ売りはあるだろうが)。彼我の差は想像以上に大きいのである。

結論:webOSに将来はない(利益は見込めない)と考えタブレットを捨てたHP。PCのトップベンダーで利益を出してはいるが、Appleのように利益をあげるなど夢のまた夢と判断し、レノボにPCを売り渡した事で利益を上げられる体質になったIBMをモデルに習おうとしている。デビュー当時はエグゼクティブ用の特別なMobile PCであったAirをエントリーモデルに進化させてしまった(高級感は一切失われていない)Apple。シェアなど無視してもAppleは間違いなくMobile PCのトップベンダーなのだ。

火曜日, 8月 16, 2011

Motorolaを買収したGoogle

 MicrosoftがNokiaを買収するのではと言う噂が流れた時にMotorolaも買収候補ではないかと言われていたが、降って湧いたようにようにGoogleがMotorolaの買収を発表した。特許問題でAppleなどから訴えられているSamsungやHTCは、早速好意的な声明を出していたが、果たして本心はどうなのだろう。
 
 誰も最終的な責任を取るように見えないAndroidは信用するに値しないと常々書いてきた私からすれば、Googleがハードも持った上でAndroidの面倒を見る気になったのは評価したいが、オープン戦略はそのまま維持すると言われても、それでは今回の買収はクロスライセンス狙いかと判断せざるを得ないだろう。何故なら、Motorolaを特別扱いして最新のOSをMotorolaに提供すれば他のライセンシーの離反を生み、全ライセンシーを公平に扱えば既に赤字体質になっているMotorolaが赤字から脱却する可能性は低くなるからだ。
 
 Nexusシリーズは初代がHTC、SはSamsungだったが次は今のところ決まっていないようだが、もしMotorolaが製作するようであれば、次期バージョンからはUIも含めてコントロールしようと言うGoogleの思惑は完全に外れ、各メーカーは今以上に違いを出すためにハードやソフトに手を入れてくるだろう。そうなればGoogleによるAndroidのコントロールは画餅になってしまい、今以上に渾沌は深まってしまう。まさに、Androidのジレンマなのだ。
 
 対するAppleは始めからライセンスなどは考えていないので何ら戦略に変更の必要はなく、Nokiaを買収するのではと言われているMicrosoftは今回の推移を確かめた上で、製造部門を傘下に収めるのかライセンスに徹するのかを判断すれば良いことになり何らマイナスになる事はないのである(現在のシェアから考えてこれ以上失うものはない)。 

結論:今回の買収劇でMicrosoftが当て馬に使われたと言う判断も成り立つが、一方でMicrosoftが買収の噂を利用して、本来買うべきではなかったMotorolaをGoogleに押し付けたのではないかとの考えも成り立つだろう。何故なら、Googleは純粋なライセンサーの立場を失った上に離反の種を植え受けてしまった。意地悪く考えればGoogleはまんまと嵌められたと言えるのである。

日曜日, 8月 14, 2011

iPadはNon PCか?

世の中にはiPadはPCではないと考えている人たちがいるが、私はiPadはNon PCではなくNext PCだと考えている。そう言うとタブレットPCと一緒なのだと勘違いする薄らバカもいるだろうが、タブレットPCと呼ばれたデバイスは本当のタブレットPCでは無く出来損ないのPCだったのだ。

iPad以前にあったタブレットはタッチパネルが付いただけで、タッチ画面で操作出来る意味が全く無かった。大体、スタイラスペンでなければボタンも押せない様なインターフェイスならタッチパネルなど使わずにマウスやキーボードを使う方がよっぽど便利。そんな中途半端なインターフェイスに高い金をつぎ込むのは余程の物好きだけ。売れなかったのは当然の帰結だったのだ。

PCのインターフェイスは大きく分けてCUI(キーボードで命令を実行)からGUI(ポインティングデバイスで命令を実行)、そしてHUI(ヒューマンユーザインターフェイス)へと進化している。HUIをインターフェイスとしたNext Generationは指、音声、ジェスチャーなど人間の動作そのものを入力デバイスとするのが当たり前となり、初代iPhoneはその中の指による操作を見事に具現化して見せたのである。

結論:iOS 5.0でどこ迄が実装されるかは分からないが音声認識や顔認識が準備されつつあるのは間違いない。スマートフォン用とタブレット用の統一さえまだ終わっていないAndroidがiOSに追いつくのは果たしていつ頃なのだろう。個人的は追いつく事はないと思っているのだが。

土曜日, 8月 13, 2011

Androidがダメな理由

Androidが嫌いな理由を少し前に書かせてもらったが、今回は好き嫌いではなく何処がダメなのかを書いてみたい。

ユーザインターフェイスが直感的でない:オタクな人はカスタマイズが出来るから問題ないと言うかもしれないが、カスタマイズしなければ使えないインターフェースを載せている段階でコンシューマ用デバイスとしてアウト。いつ迄経っても目的の設定が中々見つからないなどあってはならない。【四文字熟語】五里霧中

操作に一貫性がない:ハードウェアボタンで出来る事がアプリやシステムツールによっててんでバラバラ。典型的なのがバックボタンで、ある時はアプリの中で戻り、ある時は一つ前に使っていたアプリが起動、そしてまたある時はホーム場面に戻る。アプリ毎にどう言う動作になるかなど何処の誰が覚えると言うのだろう。【四文字熟語】支離滅裂

余計なハードウェアが足を引っ張っている:OSに違いがないから(変にいじっているので同じとは到底思えないが)余計なハードウェア(本当にどうでも良いハードだと思う)で違いを出そうと考えるのは分からないでもないが、結果的に足を引っ張る原因になっているのだから始末の負えない。挙句の果てにはスマートフォンなのにOSのアップデートさえままならないのでは話にならない。【四文字熟語】自業自得

メーカー独自のアプリが酷い:元々のAndroidアプリが酷いならまだしも、それ以下の自社製アプリを載せる理由をメーカーに聞いてみたい。どうせiPhoneのミュージックアプリには勝てっこないと思うなら最初から載せなきゃ良いのにと思うような酷いアプリを載せるSAMSUNG。カスタマイズが自由に出来るのが売りのはずなのにAndroid Playerを入れる事も出来ないのか?【四文字熟語】自縄自爆(縛?)

デフォルトのアプリが酷い:上とは逆なのだが、サードパーティを儲けさせるためなのかは知らないがデフォルトのアプリはサンプルアプリ程度の出来の悪さ。iPhoneやWindows Phoneならデフォルト・アプリだけで十分実用になるが、Androidに関してはそんな事はないと言えるだろう(だから、メーカーは独自のアプリを標準にしてるのだが、SAMSUNGのようにGoogle以下の場合もある)。【四文字熟語】反面教師

メディアを管理するアプリがダメ:iTunesのようにメディアを一元管理するデスクトップ・アプリがない。スマートフォンは別に音楽やムービーを堪能する為のデバイスではない(そう勘違いさせたのはiPhoneがそうだったからに過ぎない)が、その機能を持たせるのであれば、当然誰もが安心して使えるツールは必要だ。【四文字熟語】自己管理

セキュリティが甘過ぎる:Androidは未だにエンタープライズレベルのセキュリティがない。Androidの2.3まではProxyさえデフォルトでは設定出来ない(私が不勉強で出来ないと思っているだけか?)。データの暗号化もiOSのようにデフォルトではないので甚だ頼りない。経営陣はITには疎いのでスマートフォンと一括りに捉えてAndroidとiOSは同じだと勘違いするのは仕方が無いが、情報システムの人間が同じレベルでAndroidを社内に導入などと言い出しかねないから困ったものだ。【四文字熟語】自存自衛

結論:Android 4.0が出た時には解決される問題も含まれるかもしれないが、現状のAndroidは手放しで評価出来るような代物ではない。大嫌いなWindows Phone も7の時にはボロクソに罵ったが、7.5になって確実に進化を遂げた。Androidは一番肝心なユーザビリティを蔑ろにしているからいつ迄経っても評価出来ないのだ。

月曜日, 8月 08, 2011

何でiOSは素晴らしいのか

 私がiOSを高く評価するのは誰が何と言おうがApple信者だからなのだが、それでも後付けでもっともらしい理屈をひねり出して、iOS(当然OSXも)を擁護する術は持っている。今回はそんな事を書いてみたい。
 
何でiOSは素晴らしいのか
その1:既に多くの顧客がいる
iTunesで顧客となっていたユーザがそのままApp Storeの顧客となったのは、アプリのダウンロード数を見れば明らか。アプリを作成する上で、世界最大の顧客を擁するApp Storeを避けては通れないだろう。あまり知られていないが、App Storeの数はiTunes Storeよりも多いのだ。(権利関係の問題でiTunes Storeがない国がある。アジアでiTunes Storeがあるのは日本だけだ)
その2:クローズド環境
Androidの開発者はAppleが余りに専制的だと批判するが、そのおかげでApp Storeで公開されているアプリは一定以上のレベルとセキュリティを約束されている。最終ユーザにとって、安心して使える事と、統一されたユーザビリティがある事は重要なポイント。Appleが第一に考えるのは開発者ではなく最終ユーザなのだ。
その3:偉大なライブラリ群
Cocoaの開発環境を知らない人にとっては特殊な言語(Objective-C)を使っているだけで問題外なのかもしれないが、同じCの中ではC++よりも洗練されているのは間違いない。Object思考の言語は沢山ある(JavaやC#もそうだ)が、用意されているFramework(API)のライブラリの充実度はずば抜けている。それを使う限りセキュリティ問題に悩まされる度合いは他の開発環境と比較しても格段に低い。
その4:開発の敷居が高い
CocoaのベースとなるNeXTSTEPの開発環境は現存するObjectプログラミングツールの中でも最古に近い。80年代の半ばにはその第一弾がデビューしているのでMacintoshと変わらないのだが、Objective-Cという一種独特の呪文(宗教と言う連中もいる)を好きになれないためにOSX用のアプリを作っていた人は変わり者と思われていたのは仕方がないのだが、お陰でiOSが注目を浴びてからは引く手数多。どこかのOSのように盛りを過ぎたとは言えウジャウジャ開発者のいるJavaとは違い、敷居が高いと勘違いされているが幸いしているのである。
その5:ユーザビリティの高さ
フレームワークの整備もユーザビリティを犠牲にせずに最新のAPIを加えるため。見た目がシンプルなのもユーザビリティを高める上でどれだけ重要かなど、他の開発環境を使っている人にとっては恐らく重要ではないのだろう。人が用意してくれたAPIを利用するなんて沽券に関わると考えている人からすれば自分が使い易いインターフェイスが大事なのは百も承知の上で言いたいのだが、例えどんなにカッコよかろうが(大抵は格好も悪い)ユーザビリティは開発者の都合で変えてはいけないものなのだ。

結論:グダグダと言い訳をしたが、ぶっちゃけて言えばiOSが何故素晴らしいかは開発が他の開発環境と比較して目茶苦茶楽だから。同じフレームワークが使えるものであればiOSとOSXは同じソースコードで動いてしまうだろう(断っておくが全然手直しせずに動くと言うわけではない)。iOSが素晴らしいのは、手抜きでもオシャレでセキュアなアプリが作れるから。パワポしか知らない人はKeynoteを使うと同じプレゼン資料が格好良く出来る事を知らないだろうけどそれと同じなのだ。

土曜日, 8月 06, 2011

失敗に終ったスマートテレビ戦略

 スマートテレビというジャンルで売ろう目論んだメーカーは軒並み夢破れたようだが、そもそもテレビをスマートにしようと言う定義が間違っていると気付いていないのが問題の根源。パケットでデーター化すればチューナーさえ不要な時代に余計な機能を付加しようと言うのは時代錯誤。画質のアップコンバートや音質の向上など本質的な部分に力を入れ(3Dではない)ディスプレイに徹すべきだろう。
 
 Google、SONY、Logitechの三社がぶち上げGoogle TVも結局、鳴かず飛ばずに終わったが、それでもCES2011で各社が発表した製品(2010は3Dだっけ)よりは、まだ売れた方なのだろう。Google TVに対して後出しジャンケンのようになったApple TVは機能からすればSTBと大した違いがないものだったが、番組のレンタル(バージョンアプで購入も可能に)、AirPlayなどを組み合わせる事で一番成功したのではないだろうか。

結論:未だに、趣味の範囲を越えていないとApple自身が言っているApple TVに勝てないのは、作ってる連中がスマートではないからなのである。ネットが出来るくらいでスマートと言われても…

Androidタブレットが売れるには

 Androidのタブレットが本当に売れるかどうかは、統合(別に何から何まで同じである必要はないがインターフェイスは同じにすべきだ)が予定されているAndroid4(決して3.2ではない)の出来と、各社が同時にまともにアップデート出来るようにハードウェアに縛りを付けられるようになるか如何に掛かっている。Android風からAndroid系まで有象無象が好き勝手をやっている今の状態ではAndroidと一つのOSデバイスとして括るのはおかしな話だと思う。
 
結論:Androidが統合されるのと、iOSとOSXが統合されるのとどちらが先だろう。Appleは既に次に踏み出しているのだからChromeと啀み合ってる場合ではないのだ。