月曜日, 8月 29, 2005

ストリーミング音楽配信は見切り発車?

 iTMS以外の音楽サイトでは楽曲提供のサービスの方法として定額制(サブスクリプション)のストリーミング配信を行っている。
 アップルも将来にわたってサブスクリプションを行わないとは言えないが、ユーザに楽曲の所有権を与えない(金の切れ目が、視聴の切れ目)というのでは大きな問題である。それどころかサブスクリプションは音源提供先であるレコード会社の合意を得られていないサービスである。著作権に関してかなり緩い縛りしか存在しないアメリカでさえ契約に至っていないのに、日本でどうするつもりなのだろうと心配したくなるところだが、実は日本の場合はレーベルが自分の所の楽曲を提供する形が一般的なため(自社商品しか扱わない)にお金の問題は存在しないに等しいのである。でもCDに焼けない(焼くほどの価値もないと言うことだろうか)なら、金を取ると言うのは随分酷い話のように思える(サービスに対応しているプレイヤーの製造会社から金を貰うのが筋じゃないの)。

 まあ、何から何まで他所の国と事情が違う日本であるが、NapsterやRealNetworksのビジネスモデル(サブスクリプション)は日本でも無理であろう。そして、アメリカではもっと難しいはずだ。なぜならばレコード会社が要求する金額を払ったのでは商売をやっている意味がない(iPodのように他に利益を生み出すものがない)し、自分たちの希望額しか支払わないのであれば、楽曲の提供は無くなってしまう。今は立ち上げ時のどさくさに紛れて色々なサービスを打ち出そうとしているが、落ち着いて考えれば無理なビジネス・モデルなのだから早めに手を打つべきだろう。

 同じの土俵に上がってはいけないサービスを同列に扱うマスコミの見識の無さには、いつもがっくり来るばかりである。

金曜日, 8月 12, 2005

SONYは自爆したいのか?

 iTMSに参加していない最大手のSONYミュージックの佐野元春が個人としてiTMSに参加を表明した。それに対してソニーは「佐野元春はもうソニーのアーティストではない」と考えているようである。こんなことをやっていると実力と実績のあるアーティストは、個人の判断でiTMSと契約をしてしまうことが解らないのだろうか。楽曲の販売方法がレコード店しかなかった時代と現在との違いが全く理解されていない。今や曲を売る自信のあるアーティストにとって、大手のレコード会社は利益を中間搾取する存在でしかないということを理解していない。その最たるものがソニーだ。系列会社のWalkmanの最大のライバルであるiPodの利益になる契約には参加したくないと言うのが真の理由なのだろうが、そんな奴らは狭い村社会に引っ込んでいればいい。自分たちで立ち上げたレーベルゲートや”mora”ともバッティングするために参加できないと言うのならば、いっそのこと利益を生むことが見込めないレーベルゲートなどをやめることが正しい判断である。つまり、単なる意地で利益を生まない事業を抱えるほど世の中は甘くない。東芝EMIのようにBusinessとは冷静な判断を行なわなければいけないだろう。今のソニーグループは、戦前の軍部のように考えが硬直している。恐らく未だに自分たちが一番だと勘違いしているのだ。それに比べ、東芝EMIは未来に向けて柔軟な事業展開を考えている。日本でも一番多くの配信事業者に曲を提供している。これはどこが本当の一番になるかはフタを開けてみなければ解らないからであるが、もしこのままiTMSが一人勝ちを続けるようであれば真っ先にソニー系の配信サイトから曲を引き上げるだろう。ATRAC3などという互換性の低い(AACも互換性が低いがシェアがケタ違いである)フォーマットをサポートする意味は内からである。

 ソニーは、佐野元春だけがiTMSに鞍替えすると考えているのかも知れないが、ちゃんとした売れる曲を作っているベテラン・アーティストはダイレクトに利益を得られるiTMSに雪崩をうって移行しないとは言えない。そうならないためにも、ソニーは一日も早くiTMSに曲を提供しなければいけないのだ。自爆したいと言うのならば好きにすればいいが、それに巻き込まれるソニー好きの音楽好きのことを少しは考えて欲しいものである。

金曜日, 8月 05, 2005

新譜から旧譜・廃盤へ

 ついにiTMS-Jが正式にスタートした。これは音楽の聞き方、買い方を変える画期的な出来事なのである。以前から何度も書いてきていることなので私のBlogをのぞいている変わり者の方々はご存じだとは思うが、何故他のダウンロードサービスがダメなのかという根本の部分を解説したい。一言で言えばレコード会社主導だからダメなのである。それじゃ、あんまりなので少し詳しく説明したい。レコード会社主導だと何故いけないのか、それはオンラインでも新譜を売ろうとするからだ。実は新譜は売れていないし、売れる訳が無い。その理由は、新譜の購入対象者は音楽を買う世代ではないからだ。音源を購入するのが当たり前とすり込まれている世代は、実は80年代までに青春を迎えた連中なのである。何故ならばFMをエアチェックするかレコードを買う以外に曲を手に入れる手段がなかった経験を持っているのはその世代までだからだ。その後、レンタルレコード屋が出来、レンタルCD屋が認められるにつれ、レンタルしてきたものをMDにコピーして聞くのが(だからMDは著作権分価格に上乗せされるのだ)当たり前になってしまった。だからよっぽどのことが無ければCDを買わないのだ。

 それとHDDプレイヤーを同一のものだと考えているJASRACとレコード会社は、完全に状況を錯誤している。また、携帯の音楽ダウンロードの方が日本では有効だという意見もある。これは、半分は当たっているが、半分は間違っている。携帯でダウンロードされた音楽は愛着を持って聞かれるものではなく、聞き流されるものなのだ。つまり所有されるものではなく、消費されるものなのである。だから、携帯は定額でサービスする、新譜だけをサービスするが正しい。つまり、1曲ごとに売るならばPC(Macの方が良いとは思う)と連動させてCDに焼き付けることが可能でなければいけない。ここが解っていない人の発言は、全て的外れなのだ。

 さて、ここからが本題だ。今までの流れを見れば解るようにiTMSのメインターゲットは若者ではない(ここで断言する)。レトロ食玩に食い付くような年代(名古屋ではない万博を知っている)が、メインターゲットなのだ。この世代の音源はLPだった(本当に気に入ったアルバムは、すり減った時を考慮して複数枚購入した)。その後時代はCDに変ったがCDが売れていたのは彼らのLPからの買い替え需要があったからだ。CDへの買い替えを行わなかったアルバムは今では手に入れることが出来ない。何故なら新譜を売りたいレコード会社は、旧譜のためのスペースなど用意してくれないのだ。つまり、商品が無いから需要がないように見えるだけで実際は旧譜(ベスト版ではない完全オリジナル版)には、大きな需要が隠されている。iTMSに無ければいけない作品とは、70年代から活動していて現在も現役でやっているミュージシャンの旧譜や廃盤(CDにして再プレスするほどの需要が見込めないように思えるアルバム)のデジタル化なのである。

 じゃあ、何故これがiTMSじゃないとできないのかである。レコード会社は、新譜を出さないといけない体質になってしまっている。その一番の理由は新譜を作らないのなら、ディレクターもプロデューサも宣伝部員も要らない(つまり自分のクビが切られてしまう)というただそれだけ、要するに保身だ。だから出す必要があるか無いかは関係ない。取りあえず出せば仕事をしたことにはなる。どうせ買う奴なんかいないんだから、レンタルCD屋に押し込めるような歌手で出しちまえというのが現状だ。そんな考え方の人間は旧譜が金になるなどと解っていても(解っていない馬鹿の方が多いとは思う)口には出せないのである。しかし、レコード会社主導でないiTMSにとってそれらの作品は宝の山である。新譜だけで100万も200万も曲をそろえることなど出来ない(レコード会社系はだから10万曲程度)。iTMSにとって大事なのは曲の新鮮さではなくストックの量なのだ。1曲6M程度の音楽などが消費するディスク容量などコストのうちには入らない。もしiTMSが日本で成功しないのだとしたら、それは音楽を愛する人がいなかったということなのだ。そんな国でなければきっとiTMSは大成功するに違いない。                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                               

月曜日, 8月 01, 2005

Macintosh伝説 〜番外編〜

Jobsの現実歪曲伝説


Intelの石はクズ:Intelの石は馬鹿みたいに熱くて使い物にならないと言ってみたり、PhotoshopのベンチマークではEXPOで毎回PowerPCが圧倒的に優れていることを示して来た。だから、Macユーザーの間ではIntelのチップなど比較の対象にもならないという考えが行き渡り誰もそんなものを使う時が来るなどとは考えてもいなかった。現にJobs以外の人間がそんなことを口走ろうものなら一斉に非難を浴びていた。ところが、PowerPCのクロックスピードがいつまでたっても速くならない(Jobsの約束を果たせない)状況に、Intelへのチップの移行が発表された。Intelのチップの方が消費電力当たりのパフォーマンスが優れている。そしてMacOSXのスタート時からIntel用のOSXを一緒に開発していたので、いつでも移行できると言うのである。Intelの石を批判したために友達を無くしたことがある人にとってはいかんともし難い状況である。

メモリタイプのプレイヤーはダメ:iPodが発表された当時世の中に多くでていたメモリタイプのデジタルプレイヤーは容量が少なく、アルバムを入れるのがやっとなので売れる訳が無いとJobsは言っていた。現実も全くその通りになりiPodだけが売れため、それまでメモリタイプしか作っていなかったメーカーはHDDタイプのプレイヤーに軸足を移さざるおえなくなってしまった。HDDの容量もどんどん大きくなる方向に進むと、今度はいきなりiPod miniを発表し容量だけじゃダメだと世の中に訴え(HDD単体の方がiPod miniよりも高く売れた)、それにメーカーが追随してくると大容量で低価格のメモリタイプをshuffleとして発表し、ディスプレイがないからこそ新しい音楽の聞き方が出来ると宣った。確かにshuffleの聞き方はアルバム単位ではなくランダムに楽しむというものであるが、それにしても、こんなことをして誰からも非難されない(MP3プレイヤーのメーカーはボロクソにこき下ろしていたが消費者はAppleを指示した)のは世界広しと言えどJobs以外にはありえない。

ムービーは携帯プレイヤーで見るものではない:映画はあんな小さなディスプレイで見るものではない。映画は何度も見るものではないと言い続け、実際にムービーを再生するiPodはまだ発売されていない。しかしiTMSではすでにミュージック・ビデオ(プロモーション・ビデオ)をオマケとしてダウロードできるだけでなく近々販売を開始する。これは、DVDをiPodに取り込んで見るような物ではないためJobsの発言が全て否定される訳ではないし、これからもそうだとは思うが、ある日突然ビデオを見るための本当の携帯端末が出来たと発表するかも知れない。日本の関連業界の方々はくれぐれもJobsの真意をくみ取った戦略を立てることをお忘れなきように。