金曜日, 8月 05, 2005

新譜から旧譜・廃盤へ

 ついにiTMS-Jが正式にスタートした。これは音楽の聞き方、買い方を変える画期的な出来事なのである。以前から何度も書いてきていることなので私のBlogをのぞいている変わり者の方々はご存じだとは思うが、何故他のダウンロードサービスがダメなのかという根本の部分を解説したい。一言で言えばレコード会社主導だからダメなのである。それじゃ、あんまりなので少し詳しく説明したい。レコード会社主導だと何故いけないのか、それはオンラインでも新譜を売ろうとするからだ。実は新譜は売れていないし、売れる訳が無い。その理由は、新譜の購入対象者は音楽を買う世代ではないからだ。音源を購入するのが当たり前とすり込まれている世代は、実は80年代までに青春を迎えた連中なのである。何故ならばFMをエアチェックするかレコードを買う以外に曲を手に入れる手段がなかった経験を持っているのはその世代までだからだ。その後、レンタルレコード屋が出来、レンタルCD屋が認められるにつれ、レンタルしてきたものをMDにコピーして聞くのが(だからMDは著作権分価格に上乗せされるのだ)当たり前になってしまった。だからよっぽどのことが無ければCDを買わないのだ。

 それとHDDプレイヤーを同一のものだと考えているJASRACとレコード会社は、完全に状況を錯誤している。また、携帯の音楽ダウンロードの方が日本では有効だという意見もある。これは、半分は当たっているが、半分は間違っている。携帯でダウンロードされた音楽は愛着を持って聞かれるものではなく、聞き流されるものなのだ。つまり所有されるものではなく、消費されるものなのである。だから、携帯は定額でサービスする、新譜だけをサービスするが正しい。つまり、1曲ごとに売るならばPC(Macの方が良いとは思う)と連動させてCDに焼き付けることが可能でなければいけない。ここが解っていない人の発言は、全て的外れなのだ。

 さて、ここからが本題だ。今までの流れを見れば解るようにiTMSのメインターゲットは若者ではない(ここで断言する)。レトロ食玩に食い付くような年代(名古屋ではない万博を知っている)が、メインターゲットなのだ。この世代の音源はLPだった(本当に気に入ったアルバムは、すり減った時を考慮して複数枚購入した)。その後時代はCDに変ったがCDが売れていたのは彼らのLPからの買い替え需要があったからだ。CDへの買い替えを行わなかったアルバムは今では手に入れることが出来ない。何故なら新譜を売りたいレコード会社は、旧譜のためのスペースなど用意してくれないのだ。つまり、商品が無いから需要がないように見えるだけで実際は旧譜(ベスト版ではない完全オリジナル版)には、大きな需要が隠されている。iTMSに無ければいけない作品とは、70年代から活動していて現在も現役でやっているミュージシャンの旧譜や廃盤(CDにして再プレスするほどの需要が見込めないように思えるアルバム)のデジタル化なのである。

 じゃあ、何故これがiTMSじゃないとできないのかである。レコード会社は、新譜を出さないといけない体質になってしまっている。その一番の理由は新譜を作らないのなら、ディレクターもプロデューサも宣伝部員も要らない(つまり自分のクビが切られてしまう)というただそれだけ、要するに保身だ。だから出す必要があるか無いかは関係ない。取りあえず出せば仕事をしたことにはなる。どうせ買う奴なんかいないんだから、レンタルCD屋に押し込めるような歌手で出しちまえというのが現状だ。そんな考え方の人間は旧譜が金になるなどと解っていても(解っていない馬鹿の方が多いとは思う)口には出せないのである。しかし、レコード会社主導でないiTMSにとってそれらの作品は宝の山である。新譜だけで100万も200万も曲をそろえることなど出来ない(レコード会社系はだから10万曲程度)。iTMSにとって大事なのは曲の新鮮さではなくストックの量なのだ。1曲6M程度の音楽などが消費するディスク容量などコストのうちには入らない。もしiTMSが日本で成功しないのだとしたら、それは音楽を愛する人がいなかったということなのだ。そんな国でなければきっとiTMSは大成功するに違いない。                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                               

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