金曜日, 6月 15, 2018

AppleとPixar

AppleとPixarはどちらもSteve Jobsが創業者だと言う事を知っている人は多いと思う。そんなAppleとPixarの浅からぬ関係がWWDC 2018で詳らかになるとは思いもしなかった。昨年のWWDCで発表されたAnimojiのキャラクターの印象はまるでPixarじゃないか(黙って似せたなら問題だと)と思ったのだが、今年のWWDCでAppleがキャラクターイメージをパクったわけではなくPixarと一緒に開発していたことがハッキリとしたのだ。

AppleのARのベースとなるデータファイルはPixarのUSDをベースとしたUSDZフォーマットとなり、自由にアバターを作成できるMemojiは、アバターを作ってみれば分かるがそのままPixarのアニメに出て来ても違和感がないくらいにPixarのキャラクター風になる。Samsungは画像認識技術を使って本院ベースのアニメ風のアバター(大して似ていないのに不気味)と言う間違った選択をしたのに対し、Appleはより親しみを感じてもらえるものにするためにPixarと手を組んだわけである。

実際の開発がいつ始まったかは定かではないが、TimがこれからはARだと宣言する前にAppleとPixarは共同でARKitのベースとなる3D技術の開発を始めていたのは間違い無いのである。GoogleにしろMicrosoftにしろARを現実世界に溶け込ませるには専用のハードウェアが必要とだと考えて開発を進めているのをよそに、Appleは処理速度さえ追いつけばARはソフトウェアだけで解決できる世界だと考えていたのは間違いない。長い開発期間と費用をかけて来たTango Projectは動作可能なデバイスが揃う前にARkitの前に討ち死に、水平面しか検出できないARKitは子供騙しに過ぎないと嘲笑っていたのも束の間、丸一年を経てバージョン2となったARKitは3次元空間をカメラで正しく錦できるだけではなく、そこに表示するコンパクトなデータファイル形式さえ用意して来たのだ。GoogleもTangoを捨て去ってARCoreを出して来たが未だに動作可能なデバイスが限られ絵に描いた餅に限りなく近い有様だ。その上、仕様上はARKitよりも凄いのだが実際はARKitと比べてお粗末な状態なのだ。

結論:創業者が同じなので反目し合っているなどとは誰も考えていなかったと思うが、ここまで密接に協力し合っているとも思わなかったAppleとPixar。それが明らかになったWWDC 2018だったのである。

水曜日, 6月 13, 2018

実り多かったWWDC 2018

通常ならWWDC前に何が発表されるかの予測を書くところだが、今回はハードウェアの発表がないとわかっていたので事前に何も書かなかった。去年のように沢山のハードが発表されるなどと妄想していたおめでたい連中もいたようだが、昨年撒かれた種がどう育ってきたのかを目の当たりにする中身の濃いWWDCだったのである。

昨年のWWDCの発表を受け、GoogleがTango プロジェクトを捨てる結果となったARKitは一年の時を経て2.0となりARの共有と言う次の段階へと進化した。GoogleもARの共有は織り込み済みなのだがWWDC初日にダウロード可能になったiOS 12のベータで直ぐに確認できることとは大きい。対応する製品はARKitが動作するA7搭載であることも重要なポイントである。ARKItの発表を受けて慌てて発表されたGoogleのCoreKitは未だに利用可能なデバイスはわずかでありiPhone 7以降が対象となるAppleに大きく水を開けられたままなのはお笑いぐさである。

そしてARに関してもう一つの大きなポイントはPixarとのコラボレーションでリリースされたオープンファイルフォーマットの「usdz」の発表である。iOS 11上では未サポートだがiOS 12のベータのインストールされているデバイスならば「usdz」フォーマットのファイルはSafariで開kいARボタンを押すだけでカメラを通した現実世界上に3Dモデルを自由に配置することが可能になる。簡易とは言えAR体験に専用のアプリを作る必要がないと言うのは非常に大きなメリットなのだ。

昨年発表されたCoreMLは、外部のシステムで作成したモデルを利用するレベルであったが、CreateMLを使うことでXcode上でMachine Learningモデルを作れるものに進化した。現状作成できるモデルは画像と自然言語に関するものだが、これはクラウドベースのMLでも同じこと。ローカルのMac上でMLモデルを簡単に作れることも大きなアドバンテージと言えるだろう。

他にもSiriのShortcutsなど色々と発表があったが、全体を俯瞰して分かることはクラウドに個人情報を投げることなくローカルで処理を完了させるエコシステムの構築を着実に進めていることである。もちろんAppleはローカルの環境だけで全てが完結できるなどと考えているわけではないが少なくとも個人情報を野放図にクラウド上に渡してしまうような真似はしたくないと意思表示したのだ。

結論:昨年撒かれた種が着実に育っていることを知るWWDCとなったのである。