金曜日, 7月 15, 2005

Macintosh伝説〜第九章〜

1993年−Sculley解任



Appleの混迷
血迷ったかと思えるほど、というよりも気違いじみている程のマシーンが販売された。Appleのショップの人間でさえ何がどう違うのかが解らないほどのMacが発表された。こんなことをしていて在庫が増えないはずはないのに、何の策もないままに違いの解らないマシーンを送り出してきた。こんな状態が1997年まで続いたのに潰れなかった所を見るとMacユーザは馬鹿なのかも知れないと思ってしまう。夢に掛けたMacユーザーに対するAppleの仕打ちは、正に恩を仇で返すと言えるものであった。当時のユーザーの口癖は、"Appleは嫌いだがMacintoshは好き"であったのは仕方のないことであった。

Newton登場!!
言ったは良いがいつまでも出なかったために妄想ばかりが頭の中で渦を巻いて過大な期待を抱いてしまったNewtonがついに登場した。約束されていた手書き文字認識(Rosettaというコード名であった)がいつまでたっても使い物にならなかったために、ロシア人の持ち込んだアプリケーションを利用して誤魔化さざるおえなかったのが、その後のアップルの迷走を示唆していたかも知れない。実際Newtonが出たは良いが、Macユーザーが望んだレベルには達していなかったためおもちゃでしかなかったのだ。出来ることが半分にも満たなかったPalmの方がバランスがとれていたのでPDAのトップの座をすぐに奪われてしまった。悲しいかなJobsによって引導を渡された最後のマシーンは完成度では文句無しであったが時代はPDAをもう必要とはしていないとJobsに判断された(そしてこれは正しい選択であった)。

Sculley解任
鳴り物入りでデビューしたNewtonは、先物買いの物好きが買った後にパタリとその売上を停止してしまった。開発に掛けた費用を回収することはどう見ても不可能であったため、人身御供が必要とされた。まさにいつか見た光景である。結局創立者であるJobsを追放したScullyにその白羽の矢が立った。その前にJobs追放に手を貸したジャン・ルイ・ガゼーも既にAppleにはいなかった。こうしてAppleの顔と呼べる人々がAppleを追い出され、ついに最悪の人選(マイケル・スピンドラーの会長兼CEO)という暴挙を行ってしまうのである。マイケル・スピンドラーはそれまでにアップルヨーロッパのマーケティングで成功を収めたと言う実績を持っていたが、ただのセールスマンであったため技術開発が主導であったAppleのような会社のトップになってはいけなかった人間だったのである。

Macユーザーは馬鹿
悲しいかな初代Macintoshに魅せられてしまった人々はその悪魔の囁きを忘れることが出来なかった。Macintoshとは仕事をこなすために使わなければいけないマシーンではなく、自分の感性を満足させるために選ぶ商品である。近所の買い物にしか使うことが無いので論理的に考えればアルトを買えば済むのに、どうしてもBMWが欲しいと考える人を馬鹿と呼ぶのならばMacユーザーはまさに馬鹿の見本である。しかしそこにあるテイストの違いが大事だと考える人にとってみれば、アルトで良いと考える人こそ何もわかっていない馬鹿だとMacユーザーは言うのである。これがWindowsユーザーとMacユーザーが歩み寄ることが出来ない壁の本質なのだ。ただもうひとつWindowsユーザーには変な連中がいる。アルトにFerrariのエンジンを積んで悦に入っているような奴らだ。本当に凄いマシーンが欲しいのならボアアップしたりする前にFerrariを買うことを考えたら如何なものだろう。

Rosetta
Appleの手書き認識ソフトに付けられていた開発コード名である。エジプトの象形文字の解読に役立った"Rosetta stone"にあやかって付けられたコード名であったが、名前負けしてしまったのか完成されることは無かった。良く考えてみれば手書き文字の認識と"Rosetta stone"には関連性が無いことに気付く(Rosetta stoneが貢献したのはローマ字とエジプト文字の対応関係による解読であって文字認識ではない)が、当時はそれに気付かなかった。そして2005年のWWDCで再びこの"rosetta"というコード名が復活した。PowerPC用にコンパイルしたバイナリーをリコンパイルすることなくIntelのCPUで走らせるためのエミュレーション技術である。もともと他所の会社で作られていたものであるが、その技術をAppleは正式に買い取ったようである。この辺りの目のつけ所の良さと柔軟性が今のAppleのスピードを生み出しているのである。

Palm
その前身は一般的には知られていないがNewtonである。NewtonにはAppleから商品化されたタイプ(Newton Mini)と、Big Newtonと呼ばれていたタブレットPC状のMac同様にフル機能を持ったNewton、そしてPocket Newtonと呼ばれた電子手帳タイプの3種類が開発されていた。機能の一番少なかったポケット・タイプは一番早く開発されたが、Appleが出すに相応しい物ではないとの取締役会の判断で開発チームは解散させられてしまった。そのため当時開発を主導していた技術者達がスピンアウトして作られた会社がPalmであった。

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